「NO」が言えるようになる!自分も相手も大切にするアサーションの基本スキル
「NO」が言えない悩み、抱えていませんか
頼まれごとを断れず、キャパシティを超えてしまい疲れてしまう。自分の意見を言えず、後で後悔してしまう。場の空気を読みすぎて、いつも周りに合わせてしまう。評価が下がるのが怖くて、言いたいことが言えない。
もし、あなたがこのような悩みを抱えているのであれば、アサーションというコミュニケーションスキルが役立つかもしれません。
アサーションは、「自分も相手も大切にする」自己表現の方法です。単に「NO」と言うためだけの技術ではなく、より健康的で対等な人間関係を築くための土台となります。
この記事では、アサーションとは何か、なぜ「NO」と言うのが難しいのか、そして自分も相手も大切にしながら「NO」と言えるようになるための基本的な考え方と実践スキルをご紹介します。
アサーションとは?自分も相手も大切にするコミュニケーション
アサーション(Assertion)とは、相手の権利や感情を尊重しつつ、自分の考えや気持ち、要求などを正直かつ率直に表現するコミュニケーションスキルです。
これは、相手に迎合して自分の意見を抑え込む「非主張的」な態度とも、一方的に自分の意見を押し通す「攻撃的」な態度とも異なります。アサーションが目指すのは、「自分もOK、相手もOK」という、お互いを尊重し合う対等な関係です。
「NO」と言うのが苦手な方は、多くの場合、非主張的な傾向があります。相手を優先するあまり、自分の心身に負担をかけてしまいがちです。アサーションを学ぶことは、自分自身の心を守り、より健全な人間関係を築くための第一歩となるのです。
なぜ、私たちは「NO」と言うのが難しいのでしょうか
「NO」と言えない背景には、いくつかの心理的な理由が考えられます。
- 嫌われたくない、関係性を壊したくない 断ることで相手に不快な思いをさせてしまうのではないか、関係が悪化するのではないかという恐れがあります。
- 評価が下がるのが怖い 頼まれたことを引き受けないと、「使えない」「協力的でない」などと評価されてしまうのではないかという不安があります。
- 罪悪感を感じる 相手の期待に応えられないことに対して、申し訳ない気持ちや罪悪感を抱いてしまいます。
- どう伝えれば良いか分からない 断り方を知らない、角を立てずに伝える自信がないため、曖昧にしたり引き受けてしまったりします。
- 習慣になっている 常に周りの期待に応えようとし、自分の欲求を後回しにするパターンが身についてしまっている場合があります。
これらの感情や思考パターンは、決してあなただけのものではありません。アサーションは、これらの困難な感情と向き合い、それらを乗り越えて自分らしいコミュニケーションを実践するための具体的な方法を教えてくれます。
アサーション実践の基本スキル:最初の一歩を踏み出すために
アサーションは、特別な才能ではなく、誰もが学ぶことのできるスキルです。ここでは、アサーションを実践するための基本的な考え方と、今日から試せるシンプルなスキルをご紹介します。
基本的な考え方:あなたは自己主張する権利がある
アサーションの根底にあるのは、「あなたは、自分自身を大切にし、自分の考えや感情を表明する権利がある」という考え方です。そして同時に、「相手にも、自分と同じように自己主張する権利がある」ことを理解することです。
この「アサーティブな権利」を自分に許可することから全てが始まります。
シンプルなアサーション実践スキル:I(アイ)メッセージを使う
アサーションの基本的な伝え方の一つに、「I(アイ)メッセージ」があります。これは、「あなた(You)」を主語にするのではなく、「私(I)」を主語にして、自分の感情や考えを伝える方法です。
例えば、同僚から急な残業を頼まれた場合を考えてみましょう。
悪い例(Youメッセージになりがち): 「いつもギリギリに頼むのは困るよ。」(相手を責めているように聞こえます)
アサーティブな例(Iメッセージ): 「(状況)急なご依頼で、(感情)正直少し厳しい状況です。(理由/提案)今日は既に予定がありまして、もし可能でしたら、明日対応させていただくことはできますか。」
Iメッセージを使うことで、相手を責めることなく、自分の状況や感情を率直に伝えることができます。状況、感情、そして要望や提案をセットで伝えることを意識すると、より明確でアサーティブなコミュニケーションになります。
具体的なステップとしては、
- 状況を客観的に描写する: 実際に起こっていること、相手の言動などを、評価や解釈を加えずに伝えます。(例:「この資料、今日の夕方までにお願いできる?」と聞かれましたが)
- 自分の感情や考えを「私」を主語にして伝える: その状況を受けて、自分がどう感じているか、どう考えているかを率直に伝えます。(例:「正直、今日の夕方までだと、抱えている別の業務があるので少し難しいと感じています」)
- 自分の要望や提案を具体的に伝える: 相手にどうしてほしいか、あるいは代替案などを明確に伝えます。(例:「もし可能でしたら、明日午前中までではいかがでしょうか」)
この3つのステップを意識するだけでも、「NO」を伝える際の曖昧さや、相手への遠慮からくる非主張的な態度を減らすことができます。
「NO」と言う時のヒント
「NO」と言うことは、時に勇気が必要です。しかし、相手との関係性を不必要に損なわずに伝えるためのいくつかのヒントがあります。
- 感謝の言葉を添える: 頼んでくれたこと自体への感謝を最初に伝えると、相手は頭ごなしに否定されたと感じにくくなります。「お声がけありがとうございます」「頼っていただいて嬉しいです」など。
- 断る理由を簡潔に伝える: 詳細すぎる言い訳は不自然に聞こえることがありますが、正当な理由を簡潔に伝えることは、相手の理解を得やすくなります。「あいにく、その時間は別の打ち合わせがありまして」「申し訳ありません、現在抱えているタスクで手がいっぱいの状況です」など。
- 代替案を提案する: 全く対応できないのではなく、可能な範囲で協力したいという姿勢を示すことができます。「明日までなら対応できます」「〇〇さんでしたら詳しいかもしれません」など。
- 保留する: すぐに判断できない場合は、いったん持ち帰ることも有効です。「一度スケジュールを確認してお返事させていただけますでしょうか」など。
- 曖昧にしない: 「たぶん無理です」「考えておきます」といった曖昧な返事は、相手に期待を持たせてしまい、かえって後で問題になることがあります。難しい場合は、難しいと明確に伝えましょう。
これらのヒントは、状況に応じて使い分けることが大切です。
最初の一歩を踏み出す練習
アサーションは、自転車の乗り方や水泳のように、練習することで身につくスキルです。最初から完璧を目指す必要はありません。まずは、小さなことから試してみましょう。
- 簡単なYES/NOから練習する:
- 友人からの軽い誘いを、正直に「今日は疲れているから、また今度にしよう」と断ってみる。
- コンビニのレジで「レシートは結構です」と伝える。
- 職場で、すぐに回答できない質問に「確認して後で返信します」と保留する。
- 言えなかった場面を振り返る: 「あの時、本当はこう言いたかったな」という場面を思い返し、アサーティブな自分ならどう言ったかを考えてみる。頭の中で練習するだけでも効果があります。
- 肯定的な自己暗示: 「私は、自分の気持ちを伝えても大丈夫だ」「断っても、相手は私を嫌いにならない」といった言葉を心の中で繰り返す。
アサーションを学ぶメリット
アサーションを学ぶことで、あなたは次のようなメリットを得られるでしょう。
- 心身の負担が減る: 無理な引き受けや我慢が減り、ストレスが軽減されます。
- 人間関係が改善される: お互いを尊重するコミュニケーションにより、より健康的で対等な関係を築けます。
- 自己肯定感が向上する: 自分の気持ちを大切にし、正直に表現することで、自分自身への信頼感が増します。
- 時間やエネルギーを有効活用できる: 本当に重要なことに集中できるようになります。
まとめ
「NO」と言うことは、わがままや冷たいことではありません。それは、自分自身の時間、エネルギー、心身の健康を大切にすることであり、結果としてより良いパフォーマンスを発揮し、周囲とも健全な関係を築くことにつながります。
アサーションは、自分も相手も大切にするコミュニケーションの土台となるスキルです。最初の一歩は、この記事でご紹介したIメッセージや「NO」を伝える時のヒントを、身近な簡単なシチュエーションから試してみることです。
完璧を目指さず、少しずつ練習を重ねていくうちに、きっと「NO」と言うことへの苦手意識が和らぎ、より自分らしく、快適に過ごせるようになるはずです。
このサイト「アサーションはじめの一歩」では、職場の場面や友人との関係など、様々なシチュエーションで役立つ具体的なアサーションのフレーズや実践方法をさらに詳しく解説しています。ぜひ、他の記事も参考にしていただき、あなたのアサーション習得にお役立てください。