アサーションはじめの一歩

【最初の一歩】自分の気持ちを正直に伝えるアサーション基本と実践

Tags: アサーション, 自己主張, コミュニケーション, 人間関係, 初心者

自分の気持ちを伝えるのが苦手なあなたへ

「自分の気持ちや意見を正直に言うのが苦手だ」と感じていらっしゃるでしょうか。頼まれごとを断るのが難しいだけでなく、会議で発言するのをためらったり、友人との約束で自分の希望を伝えられずに相手に合わせて疲れてしまったり。場の空気を読みすぎるあまり、心の中に本音を閉じ込めてしまうことは、あなたの心身に大きな負担をかけているかもしれません。

しかし、無理なく自分の気持ちを伝え、同時に相手との良好な関係を築くための方法があります。それが「アサーション」です。アサーションは単に「NOと言う」技術ではなく、自分も相手も大切にしながら、正直に、率直に、かつ対等に自己表現を行うコミュニケーションの考え方とスキルです。

この記事では、「自分の気持ちを伝えるのが苦手」という悩みに寄り添い、アサーションの考え方に基づいた、具体的な伝え方と実践方法を分かりやすく解説します。今日から始められる小さな一歩を見つけてみませんか。

なぜ、自分の気持ちを伝えるのが難しく感じるのでしょうか

私たちはなぜ、自分の気持ちや意見を表現することに難しさを感じてしまうのでしょうか。背景にはいくつかの要因が考えられます。

特に職場では、「わがままだと思われたくない」「評価が下がるのではないか」といった不安も加わり、さらに気持ちを伝えづらいと感じるかもしれません。

アサーションとは?自分も相手も大切にする自己表現

アサーションは、自分自身の権利や欲求、意見、感情を、率直に、正直に、そして適切な方法で表現することです。同時に、相手の権利も尊重することを忘れません。

アサーションは、以下の3つのタイプの中間にあるコミュニケーションです。

  1. ノン・アサーション(非主張的):自分の気持ちや意見を抑え込み、相手に合わせてしまうタイプ。「NOと言えない」「自分の意見が言えない」のはこのタイプに含まれます。自分を犠牲にしてしまい、ストレスが溜まりやすい傾向があります。
  2. アグレッシブ(攻撃的):自分の意見や要求を、相手の気持ちや立場を無視して一方的に押し通すタイプ。短期的に目的を達成できることがあっても、人間関係を損ないやすい傾向があります。
  3. アサーティブ(主張的):自分も相手も尊重し、対等な立場でコミュニケーションをとるタイプ。自分の気持ちを正直に伝えつつ、相手の意見にも耳を傾けます。

アサーションは、このアサーティブな状態を目指すものです。自分の気持ちを伝えることは、わがままや攻撃とは異なります。それは、自分自身の価値を認め、心身の健康を保つために必要な自己尊重の行為なのです。

自分の気持ちを伝えるアサーションの基本原則

アサーションで自分の気持ちを伝える際には、いくつか基本的な考え方があります。難しい理論ではなく、実践的なポイントとして捉えてみてください。

例えば、待ち合わせに遅刻した相手に対して、「また遅刻?あなたはいつも時間を守らないね!」と言う代わりに、「私は〇〇さんとの約束を大切に思っているので、待っている間、少し心配になりました」と伝えるのがIメッセージです。事実(遅刻)、自分の感情(心配になった)、影響(約束を大切に思う)を冷静に伝える練習をします。

具体的なシチュエーション別:気持ちの伝え方フレーズ例

日常生活や職場でよくある場面を想定し、アサーションの考え方に基づいた気持ちの伝え方フレーズ例をご紹介します。あくまで例であり、状況や相手との関係性に合わせて調整することが大切です。

1. 職場での意見・提案

会議中や上司・同僚との会話で、自分の意見や提案を伝えたいけれど躊躇してしまう場面です。

2. 友人との計画調整

食事や遊びの計画を立てる際に、自分の希望を伝えられず相手任せにしてしまう場面です。

3. 家族やパートナーへの要望・分担依頼

家事の分担や日常生活で、協力してほしいことを伝えたいけれど言い出せない場面です。

今日から始める!自分の気持ちを伝えるための実践ステップ

アサーションは、知識として知るだけでなく、練習によって身につくスキルです。最初から完璧を目指す必要はありません。小さく始めて、少しずつ慣れていきましょう。

  1. 自分の気持ちや意見に気づく:まずは、「自分はどう感じているか?」「本当はどうしたいか?」という内なる声に意識を向けましょう。日常の中で、「これは少し違うな」「こうだったら良いのに」と感じる瞬間に立ち止まり、自分の心を確認する習慣をつけます。
  2. 小さな場面で練習する:いきなり重要な場面でアサーションを試みる必要はありません。例えば、カフェで注文する際にいつもと同じものではなく、少し気になるものを頼んでみる。友人に「どこでもいいよ」と言う代わりに、「〇〇が食べたい気分かな」と軽く伝えてみる。このように、失敗しても影響の少ない小さな場面で、自分の気持ちを言葉にする練習を重ねます。
  3. 「Iメッセージ」を使ってみる:練習の際には、「私は~と思う」「私は~と感じる」というIメッセージの形を意識してみましょう。例えば、「この企画は難しい(Youメッセージになりがち)」ではなく、「私はこの企画を進める上で、~の点が少し難しいと感じています(Iメッセージ)」のように言い換えてみます。
  4. 伝え方の「型」を参考にする:上記のフレーズ例のように、シチュエーションに応じた伝え方の型をいくつか覚えておくと、いざという時に言葉が出やすくなります。「クッション言葉+Iメッセージ+要望(代替案)」のような流れを意識してみましょう。
  5. 完璧を目指さない:一度でうまく伝わらなくても、落ち込む必要はありません。アサーションは練習が必要ですし、相手もアサーションに慣れていないかもしれません。伝えようとしたこと、その一歩を踏み出した自分を褒めてあげてください。

自分の気持ちを伝えることへの不安にどう向き合うか

「でも、やっぱり怖い」「嫌われたらどうしよう」という不安は、当然の感情です。アサーションの実践に伴うよくある不安と、それに対する考え方を見てみましょう。

アサーションを実践することは、自分自身を大切にすることです。自分を抑え込み続けることは、自己否定につながり、長期的に見て人間関係や心身の健康に悪影響を及ぼす可能性があります。少しの勇気を持って、自分の気持ちを表現する練習を始めてみましょう。

自分の気持ちを伝えることで得られるメリット

アサーションを通じて自分の気持ちを適切に伝えられるようになると、様々な良い変化が訪れます。

まとめ:アサーションで、あなたらしい一歩を

自分の気持ちを正直に伝えることは、決してわがままや攻撃ではありません。それは、自分も相手も尊重する、健康的で建設的なコミュニケーションのあり方です。

「NOと言えない」「自分の意見が言えない」といった悩みは、アサーションの考え方とスキルを学ぶことで、少しずつ解消していくことができます。完璧を目指すのではなく、まずは「自分の気持ちに気づく」ことから始め、日常の小さな場面で「Iメッセージ」を使って気持ちを表現する練習を重ねてみてください。

最初は勇気がいるかもしれませんが、アサーションはあなたの心を守り、よりあなたらしい人生を送るための強力なツールとなります。この記事が、あなたが自分の気持ちを大切にし、正直に伝える最初の一歩を踏み出すためのお手伝いになれば幸いです。